「あれ? 碇くん何処行ったの?」
「本当だ……せっかく色々と質問責めにしようかと思ったのに……」
「なんだろう、今のウチのクラスにいる男子とはちょっと雰囲気違ったよねぇ〜」
「うんうん、落ち着いてるっていうか、大人びてる感じ」
「その割には可愛い顔しているし」
「どうしようかな〜、狙っちゃおうか。というか襲おうか?」
「それ、サイテ〜」
シンジが転入してきた日の、最初の休み時間。
シンジのクラスで、クラスメイトの女子がこんな会話を繰り広げていた事を、休み時間突入後足早にクラスを後にしたシンジが知る由もしなかった……
「あいつとは結構仲良くできそうだよな?」
「そうだな。女子ではないということが分かったときは落ち込んだが、あいつはイイやつだ、俺にはわかる」
「お前に分かるんならば、他のやつらにも分かることだっての」
「何を〜!」
「つか、あいつを女装させたら、売れるんじゃないか……?」
「ふむ……」
シンジが転入してきた日の、最初の休み時間。
シンジのクラスで、クラスメイトの男子がこんな会話を繰り広げていた事を、休み時間突入後足早にクラスを後にしたシンジが知る由もしなかった……
ってか、頬を染めながら、一体何を妄想しているんだろうか、こいつらは。
逃げた先、迎える者
第五話 初日
「リツコさん、お願いできませんか?」
「えぇ、いいわよ。それにしてもレンちゃん、こんな所までついて来たらいけないでしょう。今度からは大人しく家にいるのよ?」
鞄の中に隠れていたレンをつれてやってきたのは、リツコさんの働いている場所、保健室だ。
理科の先生も兼任しているということだが、どうやら本業はこちらの模様。
“向こう”で見ていた白衣姿と同様の出で立ちなので、思わず緊張してしまう。
「…………? どうかしたの、シンジくん。私をじっと見つめて……」
「い、いえなんでもありませんからっ。と、とにかくレンをよろしくお願いします!」
「え、えぇ。わかったわ」
レンを手早くリツコさんに渡すと、『失礼しましたっ』と一言残して保健室から飛び出す。
出て行くときに聴こえた『馬鹿』という声は、果たして幻聴だったのだろうか。そしてレンがじっと僕の方を見つめていたことがとても気になった……
それよりも……
こっちのリツコさんの方が、持っている雰囲気が柔らかいというかなんというか。
付き合いやすい感じがすることは確か。
あっちの方はクールというか、色々と割り切っているというか……
少しだけ恐かった。
さてこれから、上手くやっていけるのだろうか……
今更になって、不安という言葉が、僕の中を駆け巡っていった。
っと、早く教室に戻らないと授業が始まってしまうや。
転校初日から、授業を欠席なんて悪いことはできないしね。
早いところ教室に戻ろう。
「きり〜つ、気をつけ〜……礼!」
「ありがとうございました!」
今日一日の授業を終えて、持った感想はとにかく疲れたの一言に尽きる。
休み時間の度に、僕の周りのは男女問わずの人だかりができ、質問責めにあった。
よく飽きないな、と思ったけれどやっぱり転校生というものが珍しいのだろうか。
『何処から来たの?』という質問については、返答に困ったけれどリツコさんに言われた通りに答えておいた。
答えに困ったときにあたふたすると『可愛い〜』という声が聞こえたけれど、やっぱりあれは僕のことなんだろうか……
男の僕としては“可愛い”といわれても、あまり嬉しくないというかなんというか……
そんな感じで、今日一日の学校生活を振り返っていると、誰かから声をかけられた。
「ねぇねぇ、碇君。今日これから暇?」
「ここに来たばっかりって言ってたでしょ? なんだったら私たちがこの町の事、案内しようか?」
「え、えっと……このあと用事ある……「何いってるんだお前らはっ」……し、って?」
「何って何よっ、私たちがシンジ君を先に誘おうとしているのよ!邪魔しないでっ!」
「邪魔とはなんだ!碇は俺たちの仲間だっ!俺たちがいろんな所を紹介していくんだっ!」
……一体何が起こっているのだろう。
目の前で繰り広げられている喧騒の波から外れた所で、僕はそれを見つめていた。
見れば分かるように、この町のことを案内したいだけのようなんだけども、男子と女子で対立してしまった。
話題の中心の人物は僕なのに、何で僕だけ外れ者になっているんだろう……
クイックイッ
ん? なんだろう、足元が何かに引っ張られるような……
気になったので足元のほうを見て見る。
そこには黒い影が。
「レンっ!?」
「にゃ〜」
僕の呼びかけについて一鳴き返すレン。
どうやらレンはリツコさんのところから抜け出して、やってきたようだ。
一応昼休みのときに会いに行ったのだが、ベッドで日に当たりながら丸くなって寝ていたような……
幸いにも僕の声はクラスの喧騒にかき消されたようで、誰一人僕の大声には反応していない。
レンについても然り。
僕は静かに、レンの後について教室を後にした。
「どこへ行くつもりなのかな、レンは」
どうやらレンは元々僕を呼びに来たようだ。
僕がレンに気付いた早々に教室の外に向かって歩き出していたのだ。
早く帰りたいのか、はたまたその他の理由があるのか……
そんなことは分からないけれど、この街についての地理がない以上はレンに従うのもいいかもしれない。
「って、ここは…………保健室じゃん。もしかしてリツコさんが呼んでたとか?」
そうレンに問う。
僕の問いかけに対して、レンは少しだけこちらのほうを見ただけで、保健室の中へと入っていった。
やっぱ入って来いっていうことなのかなぁ……
ネコの行動なんてよく知らないから、正直困ることだけれども、知り合いといえばレンとリツコさんしか思いつかないわけだから、素直に保健室に入る事にした。
「あら、シンジくんいらっしゃい」
「リツコさん、いつの間に保健室のドアに“レン専用口”を作ったんですか?」
「気付いたのね……今日は授業がなかったから、空いている時間を利用して作っていたのよ」
なんという待遇度だろうか。
そしてリツコさんはこれからもレンを連れてくるという事だろう。
朝の時と全然違うのだから……
当のレンはというと、白いシーツが布かれたベッドの上で丸くなっている。
僕らの話を聞いているのか、時々耳をピクピク動かしている。
「それで、なにか用があったんですよね?」
「あ、そ、そうよ。昨日言ってた、アルバイトの件だけど、一応明日来てくれっていうことだったから。大丈夫よね?」
「はい、全然大丈夫ですよ」
「ならお願いね。明日は一応私もついていくから」
「分かりました」
まだ仕事があるから、先に帰っていいというリツコさんの言葉を受けて、僕とレンは一足先に家路につくことを決めた。
早く校内から抜け出さないと、クラスの人に見つかったとき厄介だ。
「レン、帰ろうか」
「にゃー」
既に日は傾き、町を紅く染めている。
まるであの世界を彷彿とさせる光景だけれども、この世界には命が感じられる。
新しい人生が幕をあけるというのは、こういうことなのだろうか。
自分が生まれ変わったような、そんな気分。
レンと二人、家路につく。
誰かが近くにいるという、温かさが心の中に染み渡っていくのを感じた……
「…………帰りましょう」
「どうしたの急に、まだ今日来たばっかりだっていうのに」
「感じたの、来たわ」
「ほんとう!? あの馬鹿が!?」
「彼を馬鹿というのは、例えあなたでも許せないわ」
「うっ……ゴメン。でもさ、せっかく首都に来たんだからちょっとは買い物でもしていかない?」
「…………そうね。せっかくだからね」
続くと思います
あとかき
久しぶりの更新です。半年振り近くになっているかと(大汗
シンリツな話にしたいと思いながら、頭の中にはALLな話かもしくはシンレンな話しか浮かびません(汗
どうしましょうねぇ……
とにかく、最後の二人は紅と蒼の二人です。
ついでにあと一人次回出てきます。
こうご期待。
早い段階で月姫サイドに移行しそうな予感もします。
プロット立ててない、一発本書きなんで設定やら内容やら、あらが目立ちますがそこは一つ黙認したってください。
感想やら突込みやらあったらドンドン教えてください。
一応向上したいと思っているんで……
では、次は早い段階でお会いしましょう。
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