逃げた先、迎える者

BACK NEXT TOP


第一話







 月の光がレースのカーテンを突き抜けて部屋を照らす。

 部屋にいるのは、少年一人と猫1匹。

 少年はベッドで身を起こした状態で柔らかな光を放つ月を見つめている。

 手は、少年の膝の上で丸くなっている猫の背を撫でている。

 
 月の光により、照らされた少年の表情は…

 どこか儚く、幻想的である…

 
 だがそれは消えていきそうではなく、今新たなる道を見つけたかのように…

 かつて少年が持っていた迷いなど見受けられない。

 自分の居場所を見つけたのだろうか…

 
 「そろそろ寝ようかな。

  これからよろしくね、レン。

  じゃあお休み…」

 
 少年、碇シンジは自分の上で丸くなっているレンに言うと布団を被り横になる。

 
 程なくして部屋には物音一つ聞こえなくなる。

 あるのはただシンジの静かなる寝息だけ…

 
 
 これからの新たなる生活が待ちどうしいかのように…













逃げた先、迎える者

第一話



















 金髪の美女、赤木リツコに連れてこられた海沿いに建つ一軒家。

 シンジは明らかに一人で住むには大きすぎるだろうと思われる家の前にいた。

 昔ながらの日本家屋というわけではなく、いかにも最近建てました! と言わんばかりの洋風な家だ。

 リツコは家の鍵を取り出すと玄関の鍵を開け、そして扉を開ける。

 
 「さぁ、入っていいわよ」

 
 素っ気無い単純な言葉。
 
 シンジはそれに至極当然と思われる言葉で返す。


 「あの…お、お邪魔します…」


 が、しかし。

 リツコはそんなシンジの返事を聞いて静かにため息をつく。

 他人に自分の理想を押し付けてしまったこと自体間違いだが、何故かもの悲しさが込上げてくる。

 リツコは悲しげな、寂しげな笑顔を浮かべてシンジに伝える。

 
 「あなたはこれからここに住むのよ、だったら……違うでしょう?」


 たったそれだけの言葉。

 それはシンジがかつて別の人にも言われた言葉。

 初めて自分の居場所を見つけることになった言葉。

 逃げたこともあったが…
 
 それでも自分の居場所を与えてくれた言葉。

 シンジの頬を一滴の涙が零れ落ちた。

 
 「た……ただいま…」

 
 お帰りなさい、とリツコは優しい微笑を浮かべながらシンジを家にと迎え入れた。

 















 リツコはシンジを自分の家へ入れた後に、空き部屋となっている2階の一部屋を使うように言った。

 シンジは自分の足で、目で確認しに行く。

 当てられた部屋は約6畳ほどの広さの洋室。

 元々置いてあったのかベッドと机、タンスといった物が存在していた。

 確認しに来ただけだったので特にすることも無い。

 シンジはベッドに腰掛けるとそのままの勢いで寝転がる。

 横にはちゃんと着いて来たのか黒猫もいる。

 視線の先にあるのは汚れなどない白い天井。

 シンジはなんとなくそれを見ながら自分の部屋を確認する前にリツコに言われた言葉を思い返していた。


 『あなたに与えた部屋意外にも部屋はあるんだけどそっちには入らないように。

  使っているから』

 
 という事はリツコ意外にもこの家に住んでいる人ではないか。

 そうシンジは考えた。

 元々居候がいるわけだから別に人ひとり増えたわけどうだってことは無い、という事なのだろうか。

 実際の話、シンジはリツコでないのだからわからないのだが…

 
 考えすぎなのかそれとも思いつめすぎなのかシンジは少し頭痛を感じた。

 あまり考えすぎるのも良くない、あえて流れに身を任せるのもいいかもしれないとシンジは思った。

 とりあえず何もすることがないので傍らにいた黒猫を両手で持つと、

 自分の頭の上に持っていき、黒猫の瞳を見る。

 黒猫の赤い瞳がじっとシンジの瞳を見つめる。


 ニャア

 
 と、猫がひと鳴きした。

 抗議でもしたいのだろうか。

 でも暴れることもなくシンジの手で抱えられたままだ。

 
 「そういえば……」


 何かを思い出したかのようにシンジが呟く。

 
 「君の名前、決めてなかったね」


 あたかも自分の猫だということを主張するようかの物言いだ。

 黒猫はシンジの言葉を理解したのか首を振る。

 シンジはそんな行動をした黒猫に疑問を抱いた。

 
 「もしかして…… 名前もうあるの…?」


 今度は一つ頷いた。

 人の言葉など完全に理解できているみたいだ。

 賢い…とかそういうレベルではないようだ。

 シンジは予想外の猫の賢さに驚く。


 「それじゃあ、君の名前は……何?」


 じっと黒猫の瞳を見つめながらシンジは問いかける。

 だが所詮は猫。

 人の言葉を理解することができても話せることはまず無い。

 まさか返事、返ってこないよね〜。とシンジは真剣に思っていたりする。

 
 「―――――」


 ………?

 なんだろうか。
 
 シンジは何かの「言葉」が耳からではなく脳内に直接響いたのを感じた。

 しかし「言葉」は口から発し耳から聞き取るもの。

 それが直接脳内に聞こえるなんて……!?

 シンジは思わず回りを見渡した。

 誰もいない。

 いるのは抱えている黒猫だけだ…
 
 まさか…

 シンジの脳裏に一つの考えが浮かぶ。
 
 しかしシンジはそんな自分の考えを否定するかのように首を振り自分で勝手に納得する。

 
 「猫が人の言葉をちゃんと理解できるはず無い、それも言葉なんてね」


 阿呆らしい考えをしたと思い静かに目を閉じる。

 






 部屋には何一つ物音がしなくなった。

 余りの静けさの所為か部屋にシンジの寝息が響き渡る。

 部屋に入り込む柔らかな月の光がシンジと黒猫を照らし出す。

 幸せが訪れてくるのを期待させるかのように…














 あとかき…


 お久しぶりなゴ〜ヤです。

 書き終えて一言…

 「食事とかはどうした!!」

 すっかり忘れてました、ハイ…

 まぁ何事もなかったという事で…(汗

 ちなみに前回の時、これの設定みたいな事、今後の事やら書きましたが

 すべて無視します。

 どうも書きたいように書いていったほうがいいようなので…
 
 一応リツシンでいくつもりだけど変わるかもしれんしね…w


 細かい事は次回のあとかきに回すかな…

 では、定期更新を目標に頑張ります。


 

BACK NEXT TOP

-Powered by 小説HTMLの小人さん-

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送